丸洗い・汗抜き よくある質問

◆丸洗いの料金が各社、大きく違うのはどうしてですか?

インターネットで着物の丸洗いの料金を調べてみると価格の差がありますが、洗い方が違うのでしょうか?

いくつかの要素が絡んで料金が決まると思いますので明記させていただきます。

◆ 丸洗い前に着物の検品にかける時間(手間)

お預かりした着物を1枚1枚細かく丁寧に検品して、ほつれやシミなどをお客様と一つ一つ確認する作業は時間と手間がかかりますが非常に丁寧で安心できます。一方、預かった着物を細かな検品もせずにまとめてドライ機(洗濯機)にガサっと入れて洗ってしまうと手間もかかりません。もちろん1枚1枚の検品などに時間をかけている方が人件費もかかるので洗う料金も高くなる傾向があると思います。当店は1枚1枚丁寧に検品します。

◆ 洗い方の違い
丸洗いをする機械自体には、それほど大きな差はありませんが、洗う時間や洗い方、乾燥の仕方、有機溶剤の違いはあります。例えば、弱い設定で30分くらいかけて優しく洗うやり方と強い設定で10分程度で簡単に洗う設定だと洗い方にも差がでてきます。実際は機械が洗っているので、そこまで手間という訳ではないですが、重要なことは着物によっては色落ちしやすい物や生地の弱っているものがありますので、その着物によって設定を使い分けて洗うことが重要です。

また洗濯後ですが、通常は乾燥機に入れます。乾燥機に入れると1時間くらいあれば乾燥しますので、短時間で丸洗いとアイロンプレス仕上げまで済ませようとすると2時間あればできる理屈になります。乾燥機が悪いわけではありませんが、やはり古い着物や生地が弱っている場合などは、生地にダメージがかかる可能性があるため注意が必要です。生地に極力ダメージを与えない乾燥方法は自然乾燥です。ただ自然乾燥の場合は、溶剤の揮発や溶剤の匂いが抜けきれるには、季節により異なりますが1日~2日ほどかかりますので時間がかかります。自然乾燥の場合は、乾燥できるスペースが必要になりますが、乾燥機の場合は、乾燥機が置けるスペースがあれば、1日に何回も機械を回せば、効率よく乾燥もできます。乾燥機の初期投資は必要なものの乾燥機で乾燥される場合と自然乾燥では、1日当たりの仕上がり枚数に何倍もの差ができます。

また洗いに使う有機溶剤の違いがあり、安い溶剤と高い溶剤では5倍くらいは料金が変わります。大きな違いとしては、KB値と言って洗浄力を示す値があり、無臭~低臭タイプでKB値が高いと性能の高い溶剤になります。着物の場合は臭いが残ることを極力避けるため、KB値が低くても低臭タイプが好まれます。この部分は、なかなか消費者には分かりにくいかもしれませんが、使う溶剤のランクは、お店のスタンスがうかがえるところです。

◆ 着物クリーニング専門店と呉服店やクリーニング店の違い

おおむね着物を販売している呉服店は丸洗いが安い傾向があります。着物の販売を主力事業と位置づけしているため、着物など物販できるお客集めのため、クリーニングでの利益はなしでも安く宣伝して、将来的に着物などを販売できる顧客作りのためにやっているところも多いです。実際、一度、そういうところでクリーニングをお願いすると頻繁にDMや電話がかかっているという話はあります。もちろん着物を着用される方なので、必要とされる方もいると思いますが、セールスされることが苦手な方は気を付けてもいいと思います。
次にクリーニング店ですが、自社で着物も洗っている所もありますが、多くは呉服店と同じで外注になると思います。外注が悪いわけではないですが、クリーニン店の場合は、接客する受付の方が着物のお手入れの知識が足りないことがあるので、お客様が求めていることが上手く伝わらないことがあるかもしれませんし、回答に時間がかかることもあります。私の経験でもクリーニング店にシミ抜きと丸洗いで出したが、シミが落ちずに丸洗いだけしてシミ抜き料金も丸洗い料金も請求された話やクリーニング店の受付の言うまま丸洗いしたが、翌年、胸や脇付近が汗で変色していたという話もあります。前者のシミ抜き依頼の人の場合は、シミ抜きがメインの相談なのにシミが落ちないまま丸洗いだけして請求されるのは残念な話です。ちゃんとしたお店なら先にシミ抜きして万一シミ抜きできなければ、シミ抜きできないという事実をお客様に説明をして、シミ抜き料金はいただかずに、丸洗いだけでも作業をするか確認するのがまっとうなお店だと思います。また後者の汗抜きの場合は、接客する人が着物のお手入れを心得ている人であれば、着物を見たときに汗がつくところや着物のシワの状態をみて判断できます。おそらく多くのクリーニング店の受付の方は、着物の洗い作業の現場を見たこともない人も多いと思います。一般的には着物全般の知識がある方が安心できると思いますので、着物のお手入れの専門店で受付の対応がしっかりしているところは安心できると思います。
一般的なクリーニング店では、そもそも着物の丸洗いを断っているところはあると思います。ただ、そういうお店でもドライクリーニングは受けていると思うので実際は着物も洗えるとは思いますが、着物ということで漠然としたリスクを感じて避けているお店はあると思います。実際、クリーニング店の受付の方に着物のお手入れの教育をするのは難しいので最初から着物のクリーニングは避けるというのは会社としての運営上の判断はあると思います。
当店のスタンスは、丸洗いに使用する溶剤、着物ごとに洗い方を変えること、乾燥方法までの一連の流れと現場を把握しています。また、お客様が着物のお手入れに掛けることができるお金の額には限度があると思いますので、その金額の範囲で優先順位を決めてアドバイスできるお店を目指しています。

◆ 丸洗いでシミや汚れ、汗は落ちますか?
残念ながら丸洗いでシミや汚れ、汗はほとんど落ちません。まず丸洗い(ドライクリーニング)の特徴ですが、水で洗うと縮みや型崩れ、色落ちやすい衣類に対し有機溶剤を使うことによって衣類への影響を抑えた洗濯方法です。より洗浄力を求めたい場合は、昔ながらの洗い張りをお勧めします。着物の丸洗いでは、主に表面のチリやほこり、軽い石油系の汚れを落とす効果が期待できます。石油系溶剤で洗う丸洗いでは汗など水溶性の汚れは、ほとんど落ちませんので、将来的に着物や長襦袢の胸、脇、背中付近が茶色く変色することをなるべく予防するために、汗をかいたときは丸洗い前に水溶性の処理をする汗抜き洗いをお勧めします。また丸洗いだけでは、シミまでは落ちないので、着物にシミがあった場合は、別にシミ抜きが必要になります。というのが一般的な回答です。
実は、KB値(洗浄力)の高い有機溶剤もありますので、それを使えばクスミなどもとれて綺麗になりそうなものですが、着物に限ってはそれを求めないこともあります。着物は非常に繊細な技法を使っているものの多く、洗濯中の摩擦や温度で劣化する可能性がないとは言えません。またクスミが取れてスッキリ綺麗になったという人もいれば、風合いが変わったというクレームもあるかもしれません。そのような着物のクリーニングでは、洗浄力を求めることの優先順位は低いのが一般的です。例えば、ドライ機が数台あり、そのドライ機ごとにKB値の高いものやKB値の低いものなど有機溶剤を変えて洗濯すればよいでしょうが、そこまでやっているクリーニング店は少ないと思いますし管理が大変です。ですので、着物の丸洗いは、安全性が高い洗い方をするのが一般です。安全性が高いということは、簡単に言えば「安全性が高い=洗浄力が弱い」ということになります。
では、丸洗いはしても同じかというとそうではありません。重要なことは、着用すると衿や袖口、汗などが付くことがあるので、まずは目利きできる専門家に見せてお手入れする優先順位を決めて、予算の範囲でお手入れすることが重要です。一番よくないのが、丸洗いしておけば大丈夫だとうという考え方です。

◆ 着用後に汗が残っているか分かる方法はありますか?

着用後は陰干しされる方がほとんどだと思います。風通しの良いところに吊るしてあげてください。長襦袢と着物はもちろんですが、帯もできるだけ伸ばした状態で風通しをしてください。数十年と経った帯は帯芯が茶色く変色してカビているものをよく見かけます。帯芯が湿気を吸ってくれるのですが、その分、しっかりと風通しをしてください。長襦袢と着物の汗の確認ですが、帯下や脇・胸付近にシワが残っていれば汗の可能性が高いです。特に半日くらい干してもシワが残っているようでしたら汗が残っている可能性が非常に高いので、汗抜き洗いをお勧めします。
体質(汗の質)によりますので、汗が残っているからと言って全ての方が将来的に変色してくるとは言えませんが、着物を大切に考えている方は汗抜きをお勧めします。